通勤客で混み合う車內、名うてのハコ師と謳われたスリの海藤(原田芳雄)は、癡漢の懐に目を注いでいた。癡漢されている女は海藤の同居人のレイ(真野きりな)。海藤はレイを囮にして、カモを狙っていた。その時「やれよ、見逃してやるから」初老の刑事の矢尾板(石橋蓮司)が蔑みの聲でささやいた。震える指先を新聞で覆い隠す海藤に「稼がなきゃ困るんだろう」刑事の言葉が鋭く突き刺さる。いつの頃からだろう、スリの名人海藤を猟犬のように、執(zhí)念深く追い掛け続けてきた刑事の矢尾板しかし、かつての宿敵海藤はアル中のスリに成り果てていた。